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『少年時代』これぞ近代日本の原点!?軍国精神あふれる昭和の少年社会

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著者:吉原さん

前回の藤子不二夫Ⓐ『少年時代』の記事では、昭和の日本の原風景をご紹介しました。

今回と次回は季節や自然の恵みといったもの以外で"時代の空気"を感じさせるエッセンスをご紹介します。

現代とは違う時代の物語全般に言えることなんですが、後から生まれた世代が取材を通してしっかりと時代考証をしながら描くものと、実際にその世代の体験者が描くものはやっぱりちょっと違うんですよ。

例えば、作者がその世代出身の場合は「当然」のことを描くだけなので全体的に踏み込みが強かったり、細かな部分を「取材してきました!」という"力み"無しに描くことができたりします。

この作品はぜひそういう視点でも読んでいただいて、戦時中の少年社会を感じ取って欲しいですね。

それでは、よろしくお願いします!

雑誌『少年倶楽部』

当時は娯楽の少ない時代でしたが、日本人は識字率が高かったので「雑誌」が全国共通の情報源となっていたようです。

昭和を紹介する際によくでてくる『少年倶楽部』はやはりこの作品でも皆の愛読書でした。

少年倶楽部は当時日本中の少年が愛読したただ一つの少年雑誌だ!

『少年時代』雑誌「少年倶楽部」

(中央公論社/藤子不二夫Ⓐ『少年時代』夏の章)

「ただ一つの少年雑誌だ!」と言い切っているの小気味がいいです。こういうところが、体験者の強みですね。

戦る気満々なコンテンツの数々

表紙は、カボチャを持った笑顔の少年なのですが、なぜカボチャなのか想像がつきますか?

目次を読むと、表紙は「できたぞ大きな南瓜」と記載されています。少年たちも食糧増産に貢献しましょう、ということなのでしょう。

いかにも「戦時」です。

他にも、「若武者の決意」「大空に誓ひ奉る」「僕はロケット彈だ」「母上おゆるしくだされ」とバリバリに戦争を連想させるコンテンツが目白押し。

これが少年ものの読み物(しかも唯一)ということを考えれば、かなりリアルに戦時を想像できる気がします。

例えば、臼井儀人『クレヨンしんちゃん』のアニメが流行った頃。

『クレヨンしんちゃん』は感受性豊かな子どもたちの感性に火をつけて「オラ〇〇だぞ!」とか言いながら下品な振る舞いをする子どもたちを大量に生み出しました。

この第二次世界大戦まっただ中の時代においては、感受性豊かな少年たちが「若武者の決意」をもって「大空に誓ひ奉」り「ロケット彈」となって「母上おゆるしくだされ」と出撃することを夢みたのです(わりとマジで)。

事実、この作品のキーパーソンである級長のタケシも14才になったら少年飛行兵に志願することを目標に勉学に励んでいます。

この時代はそういう"時代"だったのです。

想像を超えるアナログっぷり「人間Youtube」

今だと考えられないことですが、極端にエンタメの少ない時代では、人ひとりを語り部として自分の家まで遠まわりさせる暴挙も行われました。

けっきょく ぼくは遠まわりをして「少年探偵団」の話をタケシにしなければならなかった!

ぼくはタケシのおかかえの語り部にされたような気がして にがい屈辱感を感じた!

『少年時代』語り部にされる進一

(中央公論社/藤子不二夫Ⓐ『少年時代』冬の章)

今なら「歩きスマホ」で叶えるようなことでしょうか。

大日本帝国は「人間魚雷」や「人間ロケット」など数々の肉弾兵器を生み出しましたが、富山県では「人間Youtube」が運用されていました。

ヤバい。昭和、ヤバい。

でも、講談師とか無声映画とかのことを考えると、この時代においては「語り」だけでも十分にエンタテイメントとして機能していて「えがたい」ものだったのかもしれせん。

しかし、進一君には気の毒の一言。

「本から得た知識はほっておくと"他人"だが、第三者にわかりやすく紹介することで"身内"になっていく」と言ったのは岩明均『ヒストリエ』のエウメネスですが、そんな風に前向きにとらえるしかないですね…。

おつかれさまでした。

そして雪は赤く染まった…

昔はやはり体をつかった遊びが主体だったようです。

そこにミリタリー成分がミックスされることと、少年特有の「闘争への希求」もあって戦争ごっこのようなものが多かったようですね。

昭和の遊びというと、「めんこ」や「ベーゴマ」なんかが連想されますが、そういったものは戦後すこし落ち着いてからの話。この時代は物資がありませんから、やはり「そこにあるもの」で遊ぶことになるのでしょう。

彼らは学校の休み時間には体育館で「陣地とり」という遊びに興じていたようですが、私が心惹かれたのはこれです!

『少年時代』雪の城

(中央公論社/藤子不二夫Ⓐ『少年時代』冬の章)

こんなん子どもの頃に実物をみたら興奮しすぎて鼻血でも出したんじゃないですかね!

多大なるロマンを感じるのは私が雪国育ちでは無いせいもあるでしょうが、それにしても凄すぎます!

雪をそのまま使ってもこうはならないでしょうから、固めて作るんでしょうね。

私はもろにファミコン世代なので、親の世代の人たちには「もっと外で遊べ」と言われたりしましたが、まぁ今ならちょっとわかる気がします。

こういう遊びをしていた人たちが、家に閉じこもってディスプレイばっかり見てる子どもを見たら、そりゃあいい気はしなかったでしょうね。

しかし。

これは完全にやり過ぎ事案です。

その雪玉の中に石が入っていたのだ!!

『少年時代』石の入った雪玉

(中央公論社/藤子不二夫Ⓐ『少年時代』冬の章)

水木しげる先生の『昭和史』でも幼き水木先生が糞を食べされられていましたが、この時代はどうかしてます。

しばら~く前に「キレる17才」が話題になった時、「最近の若い子は加減を知らない」とか言われていたと記憶しているんですが、どう考えても昔の人の方が加減を知らない気がするんですが…。

キレる17才はキレてしまったがゆえに一線を越えてしまったわけですが、昔の人は遊びでここまでやりますからね。

正直、人の生き死にやヒロポン、窃盗などが身近にあるような環境下では「ここまでは大丈夫」のラインがすっごい上にあるんじゃないでしょうか。

現代にここまでやる子が降臨したら、ドン引きの上でハブられると思いますよ、怖すぎて。

軍国主義の影響

当時、少年たちに親しまれていた雑誌や遊びの紹介をしましたが、いかがでしたでしょうか。

やはり、外せないキーワードは「軍国主義」です。

歴史的にはあの時代が人類最後の「群雄割拠の戦国時代」なわけで、中国をケーキになぞらえたポンチ絵よろしく資源と植民地を「堂々と」争って戦争していたわけです。

まして日本は「一億総火の玉」なわけですから、当然子どもたちにも影響があるでしょう。「少年倶楽部」のコンテンツなんか最たる例ですね。

普段の遊びでも、敵味方に分かれての陣地とりが流行っていた辺りもその影響を感じます。

もしかすると日本中でこんな遊びをやってた子どもたちが、大きくなってからも「軍国少年」を引きずって根性論が先行する会社組織を作り上げてきたんでしょうか?

下の者は上の者を見て行動するので、あながち影響がないとも言い難いと思います。

まとめ

例えば、我々の年代でさえ「昭和」と言えば『三丁目の夕日』的発想をしてしまいそうですが、そのようなコンテンツは「豊かさ」を象徴するものであり、高度経済成長のたまものです。

当たり前ですけど、戦時中とはまったく異なる文化なんですね。一口に"昭和"と言っても全然別の話です。

でも、それってあなたの小学生や中学生のお子さんは区別ついてますか?

教科書でさらっと勉強したくらいで、そういう手触りが子どもたちに感じ取れるのでしょうか?

自分がその時代に生きていないと、なにかと認識が雑になりがちです。

特にネットやスマホの登場で、私たちや子どもたちの目に触れる情報はますます独りよがりなものになる傾向があります。興味のあるものしか検索しないですから。

で、あるからこそ。

こういった上の世代の人が「実体験」を作品化したようなものに触れ、当時の背景などを読み取ろうとすることで見識を広げていくやりかたも重要だと思います。「苦しい時代」の作品は特に勉強になりますしね。

子どもは活字よりもマンガの方が読みやすいですし、『少年時代』はこの時代の少年たちを主人公としているので親しみやすく、また自分たちとの共通点と相違点をよりわかりやすく感じることができるでしょう。

次回は、昭和初期あるあるやります。

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