『ドラえもん』読むとクズになる?んなわけない教育的エピソード6選

教育的エピソード6選

著者:吉原さん(@yoshihara_san

たまに見かける言説のひとつに「『ドラえもん』を読むとクズになる」という話があります。

そろそろステレオタイプになってきている気もしなくはないのですが、「次々と与えられる夢の道具がのび太の人格形成に悪影響を与え、ますます怠け者で弱い人間になる」という主張です。

(なんでそういう作品を読むと読者もクズになるかの相関性はいまいちよくわかりませんが)

改めて評すのもなんなんですが、『ドラえもん』は子どもに読ませたいと思える夢や想像力の詰まった名作です。

倫理観が未発達な「子ども」のキャラクター造形があまりにリアリティがあり過ぎて、同族嫌悪で嫌っているのか。

はたまた『ドラえもん』という超有名作を「クズ」と罵って、「斜めから世をみることができる俺カッコイイ」と自意識のコントロールに失敗していることが要因なのか。

一体全体自分たちはどれだけ立派な子どもだったのか。そもそも現時点でも彼らに物申せるほど立派な生き方をしているのでしょうか。

正直ちょっとイラッとしていたので、今日は『ドラえもん』の中の教育的エピソードをご紹介をします。

うちの子がドラえもんにハマった画像

それでは、よろしくお願いします!

『ドラえもん』1~6巻から選んだ理由

45巻もあるので全部紹介すると、書く方も読む方もちょっと大変。

そこで第6巻までに区切り、1巻から1エピソードずつ選んでご紹介させていただきます。

なぜ、6巻までか。

とくに大きな意味はないのですが、6巻は屈指の名エピソード「さようなら、ドラえもん」で終わっており、物語の「キリ」が良いからというのが大きな理由です。

(表紙も全員集合していて、いかにも「最終巻」っぽいですしね。『ドラえもん』を45巻全巻買うのがハードル高い方は、とりあえず6巻まで購入することをおすすめします)

ドラえもん6巻表紙

(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』6巻)

それでははじめていきます。

「一生に一度は百点を」・・・自分で努力することの大切さ

第1巻より。「コンピューターペンシル」は使用者の知識とは無関係に答えを正答率100%で書くことができるペンです。

のび太はそれを使ってテストで不正をおこなうつもりでしたが、ドラえもんの軽蔑しきった「目」を思い出して思いとどまり、普通のエンピツを使って実力でテストを受けました。結果はさんざんだったようですが、ドラえもんは「えらい!」とほめました。

こっそりニセモノとすり替えて「コンピューターペンシル」を使ってテストを受けたジャイアンは100点。

ジャイアンが自分の父親に報告したところ、ジャイアンのパパは涙を流します。

「とうちゃん、なくほどうれしいのかい」とまんざらでもない様子のジャイアン。「親の心、子知らず」とはこのことですね。

ジャイアンのパパ「いつも落第点のおまえが、急に百点取れるわけがないっ。」

「できの悪いのはしかたがないとして、不正だけはするなと教えてきたはずだぞ!」

怒るジャイアンのパパの画像
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』1巻「一生に一度は百点を」)

子どもが不正をして傷つくのは親や先生なのだと身につまされる思いです。

息子をボコボコに殴ったジャイアンのパパの拳と心はどんなに痛かったことでしょう。

「結果がすべて」といった価値観がグローバルなスタンダードになりがちな世の中ですが、「能力」や「結果」よりも「不誠実」を責めたジャイアンのパパの姿は、あなたの目にはどんな風に映るでしょうか。

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「ぼくの生まれた日」・・・両親がどんなに子どもを愛しているか

第2巻より。ある日のこと。散々パパとママに怒られたのび太は「ぼくはこの家のほんとの子じゃないんだ」「ほんとの子ならあんなひどいおこられかたしないよ」と疑いをかけます。

自分も親になった今なら「自分の子じゃなければ、こんなに怒るわけないじゃん」と思ってしまうのですが、これが立場の違いなんでしょうね。

タイムマシンで10年前にさかのぼり、自分が生まれた日、昭和39年8月7日(のび太は民主党の枝野幸男議員や女優の高島礼子さんと同学年)へ向かいます。

そこにいた、10歳若いのび太のパパはあわてふためいて会社を早引けしてきていました。我が子にあえる喜びでドキドキしながら、のび太のママの病室に飛び込む第一声は「バアーおとうさんだよ」。顔はデレデレで今にも溶けだしそう。

のび太はそこで両親やおばあちゃんが、自分が生まれてきたことをどんなに喜んでいたかを知ります。

「すこやかに大きく、どこまでものびてほしいというねがいをこめた名まえだよ」と自分の名前の由来を聞かされたのび太は目を点にして黙って聞いていました。

その後ものび太のパパとママは無責任な親バカぶりを発揮し、やや過大な期待に胸を膨らませつつも「なんでもいい。社会の役に立つ人間になってくれれば」と思いをはせます。

のび太「ぼくのしょうらいをあんなに楽しみにしてたのか。」

のび太「ぼくの将来をあんなに楽しみにしてたのか」
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』2巻「ぼくの生まれた日」)

扉越しに両親の会話を聞いていたのび太は、両親の愛や自分への期待を知り、その日の夜にねじり鉢巻きで勉強をはじめます。

三日坊主だったかもしれませんが、それでもいいじゃないですか。

親をやっていると怒らないように努めていても、ついつい怒り過ぎてしまったりすることもあります。

そんなとき、子どもはのび太少年のように「自分は愛されていないのではないか」と感じることもあるでしょう。自分自身も子どもの頃の記憶をたぐりよせてみれば、そんなことがあった気がします。

ですが、表現の差こそあれ赤ちゃんがはじめて生まれた時の親の気持ちはみんな同じ。このエピソードは子どもが少しでもその両親の思いに気づくことのきっかけになるかもしれません。

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「ママをとりかえっこ」・・・客観的な親の評価

第3巻より。これものび太がママに怒られるところから話がスタートしますが、めずらしくしずかちゃんやスネ夫も怒られて3人で不服を述べています。

それぞれの親に不満があるようで、ドラえもんの「家族合わせケース」によりのび太としずかちゃんとスネ夫の親をシャッフルさせました。

そうするとまたそれぞれに気づきがあるようで、改めて3人顔を合わせた時にのび太がポツリ。

「けっきょく、親だって人間だもんな。」

のび太「結局、親だって人間だもんな」
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』3巻「ママをとりかえっこ」)

一度親子関係がリセットされる中で子どもたちの中でも気づきがあるようです。

親の立場としては、「子どもにこんな物分かりの良いこと言わせちゃいけないな・・・」と耳が痛くなるエピソードでしたが、子どもたちが読んだときになにがしか感じてくれることがあるでしょう。

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「おばあちゃんのおもいで」・・・身近な人の死

第4巻より。こちらは有名なエピソードです。

祖父母というのは、親の立場とは違った愛し方ができる貴重な存在だと思います。

そんな「祖父母の死」は、子どもにとって一番初めにやってくる「身近な人間の死」ではないでしょうか。

私の祖父は私が中学生の時に亡くなりました。深い後悔。言い表せない悲しみ。止められない涙。どれも生まれて10年ちょっとのまだまだ幼い人間にとって鮮烈な体験であり、「人は死ぬ」ということをはじめて具体的に受け止める貴重な機会であったと思います。

あの体験があったからこそ、残った祖母にはできるかぎりのことをしたいと思いながら生きていくことができました。

のび太の祖母「いつまでも、いつまでも、あの子のそばにいてせわをしてあげたいけど、そうもいかないだろうね。わたしももう、年だから」

のび太を思うおばあちゃんの画像
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』4巻「おばあちゃんのおもいで」)

このエピソードは子どもに「人はいつか死ぬんだ」ということをフィクションの中でソフトに教えてくれる貴重な作品です。

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「ぞうとおじさん」・・・戦時中の話

第5巻より戦時中の上野動物園のノンフィクション童話である「かわいそうなぞう」のif作品です。

エピソード自体は、そのまま「かわいそうなぞう」から持ってきていて、空襲を受けて動物が逃げ出したら危ないので猛獣たちを殺処分せよと命令が下ったという話。

飼育員「だれがころせるもんか・・・。子どもみたいに、かわいがってきたのに。」

飼育員「誰が殺せるもんか」
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』5巻「ぞうとおじさん」)

大人の今になれば、行政がそういった命令を下すこと自体は理解できるのですが、子どもからすれば衝撃的なエピソード。

のび太のパパも笑顔まじりに「しかたなかったんだよ」と諭します。こんな時、大人の立場とは違って「しかたないとは、何ですか!」と一緒に怒ってくれるドラえもんの存在も子どもには貴重だと思います。

本編の「かわいそうなぞう」の方はただただ悲しい最後を迎えますが、『ドラえもん』においては、ひみつ道具の力でゾウをインドに送り返してあげます。

『ドラえもん』版の「かわいそうなぞう」では、小さな子どもが読んでも衝撃が少なく、それでいて一度戦争が起こればどういうことが起こるのか、ということが、子どもにもよく伝わる話になっているのではないでしょうか。

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「さようなら、ドラえもん」・・・自分ひとりで戦うこと

第6巻より。もっとも有名なエピソードと言っていいのではないでしょうか。

未来に帰らなくてはならなくなったドラえもん。ダダをこねるのび太に、のび太のパパが言います。

「ひとにたよってばかりいては、いつまでたっても一人前になれんぞ。男らしくあきらめろ。」

普段はおおらかなのび太のパパも言う時は言いますね。さすが昔の人です。

ドラえもんが帰る最後の晩、のび太は自分ひとりだけの力でジャイアンに立ち向かいます。

何度やられても起き上がり、「なにを。勝負はこれからだ」とファイティングポーズ。

のび太「ぼくだけの力で、きみにかたないと・・・・・・。ドラえもんが安心して・・・・・・、帰れないんだ!」

のび太「ドラえもんが安心して帰れないんだ」
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』6巻「さようなら、ドラえもん」)

この時点で普段ののび太からすれば一皮も二皮も剥けており、のび太なりの気迫を大いに見せています。が、ジャイアンは容赦ないですね。「しったことか!」とさらに大振りの一撃を繰り出します。

ちょうどドラえもんが二人を見つけた時、何度やられてもまとわりつくのび太に嫌気がさしたジャイアンは「悪かった、おれのまけだ。ゆるせ。」と逃げ出します。

のび太「みたろ、ドラえもん。かったんだよ。ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろ、ドラえもん。」

のび太「ぼく、かったんだよ」
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』6巻「さようなら、ドラえもん」)

これまでののび太の依存っぷりを考えれば急激な成長です。

だからこそドラえもんは滝のように流れる涙を止めることができない。のび太の中でドラえもんの存在は大きく、だからこそドラえもんに安心して帰ってもらいたいという気持ちがここまで彼を引き上げました。

ジャイアンのような存在はいつの時代のどの場所にもいるもので、大半の人間はのび太と同じであらがう術を持ちません。そんなのび太でもあらがった。ジャイアンから「まけだ」という言葉を引き出したことは多くの子どもたちの心に小さな火をともすことになるでしょう。

事実、私は「のび太でもやったんだ」「どんなにカッコ悪くても心が負けなければ負けないんだ」と相手が上級生でも組みかかっていくことができました。ボッコボコにやられましたが自分の心だけは守れたと思っています。

私にとって。

恐怖で身がすくむような相手に立ち向かうロールモデルとなったのは、スーパーヒーローである『ドラゴンボール』の孫悟空ではなく、ダメでズルくて弱いけど、そんな自分の心に打ち勝とうとした野比のび太でした。

のび太のママ「ドラちゃんは帰ったの?」

のび太「うん」

ドラえもんは帰った画像
(小学館/藤子・F・不二雄『ドラえもん』6巻「さようなら、ドラえもん」)

ドラえもんがいなくなったあとの朝の会話です。

はみがきをしながら、ママからの問いにごくふつうの表情で「うん」とだけ言葉を返すのび太は、表面的には平静をたもっています。

内面はどんなに悲しみがあったかわかりません。それでも、たったこの1コマだけでも、ドラえもんのいないこの世界で当たり前の日常を送っていこうと決意しているのび太くんの覚悟がうかがえる気がします。

人間、どんなに弱くても、誰の力にも頼らず敵に立ち向かわなければならないときがある、と示すマンガ史に残る名エピソードです。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

私にとっては、ズルくなる・弱くなるどころか、そんな自分に喝を入れていくれるかのようなマンガでした。

「そんないい話ばかり描いているわけじゃないじゃないか」と言われる人もいるかもしれませんが、のび太がズルして楽しんで終わりなんていう話も思い起こす範囲でパッとはでてきません。たいていは因果応報なラストになっています。

アニメで観るよりちょっとエッチで、毒もありますがそれもキャラクターを生き生きとさせているので、作品の魅力につながっていると思います。特にドラえもんなんか想像以上に表情豊かでした。

(しずかちゃんはセクハラの被害に遭いすぎて、ちょっとかわいそうな時がありますけど・・・)

またよく怠けて勉強しないようなことが言われますが、ことあるごとに反省して勉強に精を出すことも多いので、少なくとも私の小・中学生時代よりは確実に勉強してます。私は一切やってなかったので。

人間急に成長するなんてことは稀で、できたりできなかったり、同じ失敗を繰り返しながらもちょっとずつ成長していくものなのではないでしょうか。

リアリティーのあるキャラ造形で、楽しんで読めて、成長できるエピソードもある。

総合すれば『ドラえもん』は文句なくおすすめできる、名作です。

それでは、また!

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