「母」がテーマのマンガ作品【記事まとめ】

マンガ選書

著者:吉原三等兵(@Twitter

今日は「母」をテーマにしたマンガ作品を、これまでの記事の中から紹介したいと思います。

ここで紹介する「母」は素晴らしい母ばかりではありません(むしろ少数派)。

が、墓に布団は着せられないこともまた事実。

いろんなケースの母、いろんなケースの親子関係をみながら、あとから後悔がないように、いろいろ考えてみましょう。

新井英樹『いとしのアイリーン』では、「親孝行は素早くせいっ」とツルさんが言ってましたが、異論の余地なし。

やるなら、素早くっ。

いろいろ事情があってそうでない方は、それなりに。

そういうことのきっかけになれば幸いです。

それでは、よろしくお願いします!

押切蓮介『HaHa』

今や売れっ子の押切蓮介先生の『HaHa』です。多作の作家ですが、その作品中にチラホラ登場しては「正しい説教」をくれる「母」。

母子家庭でしょうか、父の姿は見えません。

その影響は大きかったのでしょう。この『HaHa』という作品からは、一度しっかり母について描きたかったような欲求と熱を感じました。

若い頃の母と、その母(祖母)の、愛と説教の連鎖の話です。一応ノンフィクションのジャンルになるのでしょう。とは言え、いつもの押切先生のノリで楽しく読めるように描かれています。

人には歴史があるもの。機会があったら、親の話はうかがってみるべきだと思います。

順番で数えれば、自分よりも早く亡くなるわけですから。

▶『HaHa』母に歴史あり。愛の連鎖は説教の連鎖。お金以外に遺せるもの/ヨシハライブラリ

宮川サトシ『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』

さて。宮川サトシ『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は、まさに母を亡くした話です。

ギャグ作品が多い先生ですが、この作品はノンフィクションですね。

これは、必見の一冊!!

正面から「母を失う」という体験を誠実にマンガ化。

話は母へのガン告知のシーンからはじまり、母が死ぬまでの生活、母がいなくなった世界での生活が描かれます。

▶『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』身近な家族の死を受け入れるということ①/ヨシハライブラリ

▶『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』身近な家族の死を受け入れるということ②/ヨシハライブラリ

またタイトルについて「衝撃的」と言われることもあるそうですが、実態としては全然そんなことはないです。

以下の記事でしつっこくタイトルを分解しながらそのことを説明していますので、見てみてください。

▶『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』ことは猟奇的なのか?違うでしょ、という話/ヨシハライブラリ

私はこのタイトルのおかげでこの本を手に取りました。

必要な人が必要な本を買えたので、良いタイトルです。

ひさうちみちお『精G 母と子の絆』

この本は凄い!

ひさうちみちお『精G 母と子の絆』は、主人公と認知症の母とのやりとりや生活が私小説風に語られます。

こう…一言では言い表せない、他の作品にはない魅力と下世話なリアリティが詰まった作品。

▶『精G 母と子の絆』①赤裸々っていうのはこういうことさ!認知症の母と50男の日常/ヨシハライブラリ

50代の男が、我が母を冷徹…冷静に分析する感じとか、そうして批判的に捉えていたとしても、息子として受け入れるべきことを受け入れ、淡々と日々をまわしている感じが、なんともリアル。

"力み"を感じないリアリティですね。

私小説風であるがゆえか、主人公がもともとそういう人物なのか、たまに倫理観や羞恥心を微塵も感じさせない発言が飛び出したりして、すごくいい。

(笑っていいのかな…?)と思いつつ、とりあえず笑っちゃう。

それから認知症の母の(主に被害)妄想を可視化する試みも見どころがありました。

▶『精G 母と子の絆』②認知症の妄想を可視化するとこうなる!やっぱり「ホンマもん」は違う…/ヨシハライブラリ

ガッチガチのエンタメ好きにはおすすめしませんが、独特のリアリティを携えた作品でおすすめです。

センスにハマれば笑えもします。

田房永子『母がしんどい』

過干渉な母親と、それにさらされる娘(田房永子先生)の物語。ノンフィクションです。

▶『母がしんどい』支配と依存と自立の見本市。大人になって気づいたけれど、大人は案外大人じゃない/ヨシハライブラリ

家庭は究極の密室空間なので、そこで依存や共依存が起こると、いろいろと逃げ場がありませんよね。

近藤ようこ『ホライズンブルー』

近藤ようこ先生による児童虐待をテーマにした物語。

今度は「加害者としての母」です。

主に「育児放棄」という児童虐待をしてしまった女性が、カウンセリングを受けながら過去を思い起こす形式をとった作品です。

主たる要因は「母」と「妹」。幼いころから"自尊心"を削られ続けて生きてきたことが深く影響していました。

『精G 母と子の絆』とはまた別の意味でリアリティが高く、繊細な表現。

その少女時代の描写には、特に弟や妹がいる人は共感するのではないでしょうか。

主人公を含めて、「母」が与える影響は大きいものです。

そのことのひとつの証明を、この作品に見ることもできると思います。

▶『ホライズンブルー』これぞ職人芸。あまりにも高いリアリティのクオリティ/ヨシハライブラリ

▶『ホライズンブルー』恋愛の参考書にも最適。自己肯定感の低い女性は美人でも恋愛弱者/ヨシハライブラリ

▶『ホライズンブルー』児童虐待-壊れたままの心はより弱い存在への攻撃に向かう/ヨシハライブラリ

歌川たいじ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』

今回ご紹介する作品の中で、最恐の母かもしれません。

ノンフィクションです。

▶『母さんがどんなに僕を嫌いでも』たった一人支えてくれる人がいれば、人は生まれ変われる/ヨシハライブラリ

どっからどうみても完璧な"児童虐待"を受け、壮絶な半生をおくった筆者・歌川たいじ先生が筆をとった本作。

タイトルからも、強い意志で描かれていることが想像できますね。

大人になってから、精神的な意味で母とがっぷり四つに組む辺りのくだりは圧巻。

憎愛だけで語れない何かがそこにあります。

まずは、読んでみるしかない作品。

「母」がテーマのマンガ作品【記事まとめ】・まとめ

「母」をテーマにした作品を今回は紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

すべての人は母から生まれるだけあって、マンガ作品に描かれる「母」は皆、具体的なイメージを持って描かれるものが多い気がします。

いろんな「母」やいろんな「親子関係」があるでしょうから、一概には言えないのですが、時々、折々、頭の中で整理しておくに値するテーマと言えます。

最後にご紹介しますが、私、「母」と言えば、業田良家『自虐の詩』の、このコマが凄く印象的で。

幸枝

この町に住む すべての人が 母から生まれた

『自虐の詩』母から生まれた
業田良家『自虐の詩』下巻 「母から生まれた」/竹書房

機会があれば、この作品も多くの人に読んで欲しいと思います。

それでは、また!