【大人になるまでに読みたいマンガ100選シリーズ】小学校・低学年編/20選

【大人になるまでに読みたいマンガ】小学校・低学年編

著者:吉原さん(@yoshihara_san

「大切なことはすべてマンガに教わった」…とまで言うことは叶いませんが(っていうか、それは良くないと思う)、マンガに育てられた面は数多くあります。

マンガ読みですから。(バスケットマン・桜木花道風に…)

もし。

自分がもう一度少年時代に戻るとしたら。

そして、自分の子どもや「これから」を生きる子どもたちにマンガを読んでもらうとしたら。

そんなことを考えながら、実際に自分が読んだ作品の中から思いを込めて選書しました。

選書ルール

実際に進めていく前に、まずルール等基準の説明を。

選書ルール
  • 完結・連載中問わない
  • 読んで欲しい順番で並べる
  • 途中で区切るor複数作品まとめて紹介

完結・連載中問わない

…問いませんが、結果的にはほとんど完結作品になるだろうと思います。

単純に「完結作品」と「連載中の作品」では作品数が違いますので。

読んで欲しい順番で並べる

“順序”や”流れ”って結構重要だと思ってて、読んで欲しい順番で並べています。

例えば。

野球マンガを読むにしても口当たりの良い『MAJOR』を読んだそのおかわりに、濃厚な『巨人の星』って読めますか?って話で。

いや、賢明なあなたは読めるかもしれませんが、やっぱり時代的なものもあって読みにくさを感じてしまうものだろう、と。

さらに、なるべく関連するテーマの作品は連続して読んで考えを深めていきたいところです。

別にそうでないといけないわけではないですが、ご参考いただければ幸いです。

途中で区切るor複数作品まとめて紹介

作品によっては途中で区切ってご紹介することもあります。

例えば、小山ゆう『お~い!竜馬』の少年時代編は小学生でも理解しやすい内容だと思いますが、青年編はどうでしょう?

政治的な関係や当時の社会情勢などが絡んでくるため、ちょっと読みにくいですよね。

エロも出てくるので、こういう場合はあえて切り離す!

小学生編で読みたいのは「心に種をまく」ことにつながる作品なので、それが含まれていればその部分だけをご紹介させていただくということです。

またシリーズものだったりして、まとめて読んだ方がいいようなものはまとめてご紹介いたします。

前説が随分長くなってしまい、申し訳ない。

しかし!

こういうのは最初の設定が大事なので、なにとぞご容赦ください。

それでは、よろしくお願いいたします!

小学校・低学年編/20選

  1. 『アタゴオル物語』『アタゴオル玉手箱』/ますむらひろし
  2. 『ドラえもん』(「さようなら、ドラえもん」まで)/藤子・F・不二雄
  3. 『キャプテン』『プレイボール』/ちばあきお
  4. 『ネイチャージモン』/刃森尊 (著),寺門ジモン (原著)
  5. 『山賊ダイアリー』/岡本健太郎
  6. 『サバイバル』/さいとう・たかを
  7. 『漂流教室』/楳図かずお
  8. 『火の鳥』(黎明編)(ヤマト編)/手塚治虫
  9. 『ブラック・ジャック』/手塚治虫
  10. 『ブッダ』(チャプラ編まで)/手塚治虫
  11. 『お~い!竜馬』(少年時代まで)/武田鉄矢 (原作),小山ゆう (作画)
  12. 『カムイ伝』(読めるところまで)/白土三平
  13. 『ぼくんち』/西原理恵子
  14. 『銀河鉄道の夜』/ますむらひろし
  15. 『銀河鉄道999』/松本零士
  16. 『藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編』/藤子・F・不二雄
  17. 『少年時代』/藤子不二夫Ⓐ
  18. 『のんのんばあとオレ』/水木しげる
  19. 『この世界の片隅に』『夕凪の街 桜の国』/こうの史代
  20. 『はだしのゲン』/中沢啓治
『アタゴオル物語』『アタゴオル玉手箱』/ますむらひろし
  • 絵本のような幻想的世界観
  • 脱力できる
  • ほんのちょっと冒険活劇

子どもへ選ぶ最初のマンガとして、この作品を選びました。

幻想的な世界観とお気楽な猫のヒデヨシ。

絵本の延長のように、楽しい読書体験になるでしょう。

ただし、根底に流れるものはもっと本質的なもの。

軽そうでいて空っぽじゃない。不思議な読後感が得られると思います。

<この作品の記事>

『アタゴオル物語』人生最初のマンガに最適!猫のヒデヨシと絵本のような幻想世界へ


『ドラえもん』(「さようなら、ドラえもん」まで)/藤子・F・不二雄
  • もはや教養
  • いろんな作品のネタ元
  • 6巻最終話「さようなら、ドラえもん」は必見

説明不要の国民的マンガのひとつ。

原作は全45巻となりますが、6巻までがとてつもなく区切りよくまとまっているのでとりあえず6巻までをおすすめします。

この巻までならしずかちゃんの裸も出てこないので子どもにも読ませやすいですね。

がっつり「マンガ読み道」を歩みたい場合はそりゃ全45巻読んだ方がいいと思います。

一体どのくらいパクられたか、数えてみるのも一興ですね。

※どうでもいいけど、『ドラえもん』1巻の表紙って、左の方は日焼けしてんのかな?って思っちゃうんだよなぁ…。

<この作品の記事>

『ドラえもん』読むとクズになる?んなわけない教育的エピソード6選

『ドラえもん』のび太が起業家として確実に成功しそうな気がした話

『ドラえもん』夢を追うジャイ子に学ぶ志の高さと折れない心

「しずかちゃんのお風呂問題」から考える-マンガにおける表現規制


『キャプテン』『プレイボール』/ちばあきお
  • 地道な努力の大切さ
  • 多様なリーダー像
  • “イガラシ”という概念

才能に乏しい人間がいかに勝つか。

結論としては努力しかない!

しかし、それは思考停止の努力であってはならず、正しい努力のことを指します。

ダルビッシュ有選手も以前ツイッター上でこんなこと言ってました。

でも、「正しい努力」かどうかはどうすればわかるのでしょうか?

それは、はじめた時にはわかりません。結局いろいろ考えながらやっていくしかないのです。「必ず正しい方向へ導いてくれる道しるべ」はないんです。

そんな時、手探りで頑張り続けることで、次々と仲間たちの心にも火をつけていった谷口キャプテンのことを思い出して欲しい。

そして、谷口に続く丸井やイガラシ、近藤といった歴代キャプテンのキャプテンシーの違いを見ることで、

  • 上に立つものはなにをすべきなのか
  • 上に立つものはなにをすべきでないのか
  • 自分はどんなリーダー像が理想なのか

など社会生活を送る上で早めに考えておいた方がいいことが自然に学べます。

正解は一つではないし、完璧なリーダーもいません。

その時、自分はどうするか。

また、少し話はそれますが「変身ヒーロー」って子どもたちのロールモデルとしては適切ではないんじゃないかって思うことがあります。

スイッチひとつで強くなれりゃ、世話はありません。

「最強」でも「天才」でもない君や僕が、勝利をつかみとるために必要なこと。

その一端が、『キャプテン』と『プレイボール』には確実にあります。

それから、イチロー選手やキリンジの堀込泰行さんといった名だたるプロフェッショナルが自分自身に例えた“イガラシ”のことも知っておいた方がいいでしょう。

イガラシのことは『キャプテン』(『プレイボール』)続編スタート!イガラシ世代の主要登場人物のまとめに書いています。

<この作品の記事>

『キャプテン』(『プレイボール』)続編スタート!谷口世代の主要登場人物のまとめ

『キャプテン』(『プレイボール』)続編スタート!丸井世代の主要登場人物のまとめ

『キャプテン』(『プレイボール』)続編スタート!イガラシ世代の主要登場人物のまとめ

『プレイボール』にみる「無意味なルール」踏襲の愚-どうして練習中に水を飲んじゃいけないの?


『ネイチャージモン』/刃森尊 (著),寺門ジモン (原著)
  • 牛肉の味わい方(店舗名明示)
  • クワガタムシの捕まえ方
  • シンプルな欲求を大切に

さて。

名作続きからちょっと目線を変えてみました。

恐縮しつつ申し上げるのですが、私は「食」に対して興味が薄い人に対してやや不可解な思いを抱いています。

これ別に「このあらいを作ったのは誰だあッ‼」とかそういう美食倶楽部的なつっかかりではありません。舌が肥えてるとか肥えてないとか、ウンチクがあるとかないとかじゃない。

駄菓子が主戦場でもなんでもいいです。

「食」ってもっとも根源的なもののひとつですから、こだわりがあってしかるべき。

大の大人が牛肉とクワガタムシに心血を注いでいる姿を見て、なにか感じてくれたらいいですね。

例えば、「大人になっても好きなことやり続けていいんだな」とか。


『山賊ダイアリー』/岡本健太郎
  • 猟師の記録マンガ
  • 自然との向き合い方
  • 殺したものは食べる

『ネイチャージモン』からの「食べる」というテーマの関連でこの作品を紹介します。

実録の作品で、狩猟免許をとるところから丁寧に解説。

シカやイノシシはもちろんのこと、いろんな生き物が獲物として登場します。

シンプルな絵柄で、細かく解説してくれるところがいいですね。

子どもの時によく学童保育所と図書館で読んでいた加古里子『海』 (福音館の科学シリーズ)という本を思い出します。

「とって」「食べる」。

実にシンプル。

カラスの肉って正直ちょっと気になってます(筆者曰く牛肉に近い)

茨城に行ってみようかな…。

参考 カラス食べる文化守れ 「軟らかく甘み」特産品に 茨城朝日新聞デジタル
『サバイバル』/さいとう・たかを
  • 「サバイバル」マンガの定番
  • 「知力」「体力」「気力」が基本
  • ネズミのおそろしさ

サバイバルと言えば、外せないのが、その名も『サバイバル』!

この作品の登場によって「サバイバル」という言葉が定着したという話もあります。

言わずと知れた『ゴルゴ13』のさいとう・たかを先生の作品で、地球環境が激変した中でたくましく生き抜く少年を描く名作です。

70年代の作品ですが、色あせないですねぇ。

「知力」「体力」「気力」。生き抜くためにはそのどれもが重要であることをかみ砕いて説明してくれるような作品といっていいでしょう。

2016年にリメイク(サバイバル~少年Sの記録~ 1 (SPコミックス))も果たしたようですが、やはり一度は原著で読むべきです。

ネズミ、怖い。

子どもには火起こしや山・川・海での採集など、最低限の知識は教えたいと思っているのですが、前段階でこの本を読んでもらうとモチベーション高まりそう。


『漂流教室』/楳図かずお
  • 異世界SFホラー
  • 学校でなにが学べるか
  • 人は年齢によって大人になるのではない

さいとう・たかを『サバイバル』は控えめな性格ながらも強靭な生命力を持った少年が、基本的に一人で生き抜くお話でした。

対して。

『漂流教室』の主人公は知恵も体力もまだまだ未熟な小学生であり、異世界にて集団で生き抜こうとするサバイバルが描かれます。

これ、同じ「サバイバル」でも性質がまったくことなるテーマを持つ作品になるんですね。

と、言うのもこの「集団」というのが曲者。1人で生きる場合とはまた違う種類の困難さに直面します。

か弱い人間同士は手を取り合って生き抜くしかないのですが、生存に圧力がかかる中ではそれがなかなかうまくいかない。

その中で、何を学ぶか。どんな決意をするか。

また、彼らは学校で学んでいたことが、実は自分たちの生存に直結するような貴重な知識群の集積であったことに気づきます。

そして、自分たちがまだまだ甘えたい年齢であるにも関わらず、低学年の子たちの父や母になるのだ、と自らに課すシーンは鳥肌もの。

人は年齢によって自動的には大人にならない。

子どもはこの作品を読んだときに、どんなことを考えるでしょうね。


『火の鳥』(黎明編)(ヤマト編)/手塚治虫
  • 避けて通れないマンガ
  • <黎明編>=日本神話の手塚ライズ作品
  • <ヤマト編>=大和朝廷の手塚ライズ作品

とくに異論はでないと思いますが、「手塚治虫先生の作品を読む」ということは、マンガ読みにとってどうあがいても避けて通れない道です。

ここまでマンガを読んできて、最低限度の「マンガの読み方」や「物語への耐性」は身についたはず。

さぁ、今こそ手塚治虫先生の世界へ足を踏み出しましょう。

まずは『火の鳥』の<黎明編>と<ヤマト編>をご紹介します。

小学生が読むと想定して。

日本神話や、日本の歴史の最初期の部分に触れるという意味でもいいでしょうし、『火の鳥』の中では比較的読みやすい内容だと思います。

これに関してはやいのやいのごちゃごちゃ言うより、意味がわかろうがわかるまいがまず読んでもらってからの話ですね。

『山賊ダイアリー』や『サバイバル』『漂流教室』など、ここまで読んできたサバイバル関連のマンガの「その先」が見えることもあると思います。

まず生き抜き、集団を作り、ルールを作り、権力が生まれ、敵国があって、戦争がはじまり、愛憎は深まる。

「死にたくないから生きる」という段階から、「なんのために生きるか」という段階へ進んだと考えることもできるでしょう。

問答無用の必須図書。


『ブラック・ジャック』/手塚治虫
  • 生と死と金の天秤
  • 「人の命の価値」が具体的に問われる
  • ちょうど薬になるくらいの毒

さぁ、『火の鳥』まで来たんならこの調子で『ブラック・ジャック』まで行ってしまいましょう。

非常に読みやすい作品なので、ここまで読んでこれた読者なら読めないということはないはず。

この作品では、「生命の価値」がいろんな角度から検討されます。

「命」と「金」との天秤、また「金以外の価値」との天秤。

その例題文的な短編がわんさと詰まってる。

こんなにわかりやすい例題がどんどこ出てくる作品ってちょっと他に思い当たらないですね。

一件一件のエピソードが、そのまま小学校のディベートの授業で使えそう。

  • なにが正しいか?
  • なにが悪いのか?
  • どうするべきだったか?
  • 自分だったらどうしたいか?

この作品はほとんどの人が面白く読めてしまうだけに、「なんとなく」読んで欲しくない。

ひとつひとつ、自分で考え、自分なりの答えを探そうとして欲しいと思います。

例えば、ドクター・キリコは人殺しの悪い医者なのか?

わからないものは、わからないままでいいんです。

小学生時代は、そろそろそういう「疑問」を自分の中にため込んでいきたい頃です。


『ブッダ』(チャプラ編まで)/手塚治虫
  • 俯瞰した立場からの死生観
  • 厳格な身分差別
  • 才気溢れる若者の挑戦

さらにもう一歩、手塚治虫作品に足を踏み入れましょう。

『ブッダ』は仏教の開祖であるシャカ族の王子、ゴータマ・シッダルタ(ブッダ)の生涯を手塚ライズした作品です。

ですが、いきなりそのシッダルタが主人公なわけではありません。

プロローグの主人公は、スードラ(奴隷階級)に身をやつす少年・チャプラ。

強く、優しく、才能と野心にあふれた若者が、「奴隷階層の出身」という運命に果敢に挑み、自らとそして母の幸せを手に入れようと奮闘する物語です。

ここまでの作品で生や死に触れ、「どう生きるか」「なぜ生きるか」に思いをめぐらせた少年や少女もいるかもしれません。

では、自分の意志としての「生き方」が定まればそのように生きていくことは可能でしょうか?

悲しいかな、そうとばかりもいきません。

「階級制度」による身分差別がありました。

自らの無力が原因であったとしても、果敢に挑戦した結果なら受け入れることができるかもしれませんが、そんなものも一切考慮されません。

このような、生まれによって永遠に不当な差別を受けるシステムが古今東西の人間社会に厳然と存在し続けてきました。

そして、これは人間の本質的な性質にも由来するものであり、これからの人生において早い段階から一度は深く考えておくべき内容です。


『お~い!竜馬』(少年時代まで)/武田鉄矢 (原作),小山ゆう (作画)
  • 坂本竜馬・武市半平太・岡田以蔵の少年時代(むろんフィクション)
  • いじめられっ子竜馬の生き方
  • 幕末期に見られた身分制度

さて、身分制度とくればこの作品をご紹介しておきましょう。

先ほどは遠い天竺の話ですが、これは日本での話です。

この本を読む読者の中には勉強も運動もできずに、スクールカースト底辺で辛い思いをしている子もいるかもしれません。

この作品における「坂本竜馬」像もそんなところからスタートします。

しかし、能力は高くないように描かれる竜馬ですが、人柄もあって次第に周囲に人が集まってきます。

良かったですね。あー、良かった良かった。

…。

と、いったところまで話が進んだのちに。

身分制度を背景にした凄惨な事件が起こります。

竜馬のその後の働きのきっかけのひとつとなるエピソードですが、下手すればトラウマレベルのショッキングな表現がなされているのです。

この場面は、親御さんがあらかじめ読んでお子さんに耐えられるものか判断の上で読ませてあげてください。

日常の中から、なんと理不尽に無残なことが起こりうるのか。

そして、現在の日本で「身分制度」は残っておりませんが、この本質は「権力構造」の問題ですので、権力に縁のない私たちの日常にも十分起こりうることなのです。

いや、もちろんいきなり手打ちにはなりませんが。「非道いこと」っていっぱいありますからね。

そのグロテスクさに向き合って欲しい。他人事でなくとらえて欲しい。

そういう思いからあえて小学生・低学年にこの作品をおすすめしています。

あらためて注意喚起ですが、小山ゆう先生の作品を知る人なら大体想像はつくと思いますが「とてもひどい描写」をしているので検閲なしは本当に要注意。

子どもは特に個人差が大きいので!


『カムイ伝』(読めるところまで)/白土三平
  • 架空の藩を舞台にした歴史大作
  • 非人・百姓・武士・オオカミ。3人と1匹の主人公
  • 血みどろの階級闘争

歴史大作の『カムイ伝』です。

低学年~中学年でこの作品を読破できる子はおそらく稀でしょう。

しかし!

将来への種まきのために、幼い時点で一度目にさせ、心にフックをかけておきたいのです。

今回おすすめする20選の中で最も難解な一作になるでしょうが、主人公である非人・カムイや百姓・正助らの少年時代などは十分小学生でも読めると思います。

『お~い!竜馬』の強烈なワンシーンで階級制度の恐ろしさの一端が心に刻まれたところで、みっちりネチネチとその恐ろしさを心に刻んでいきましょう。

また『カムイ伝』はオオカミを主人公の一人に取り入れたことが秀逸だと思うんですよね。

階級闘争とは人間社会特有の問題ではなく、生命が生きていくうえでの根源的な問題をも提示するからです。

まずはお子さんがわかる範囲まででいいと思いますので、ぜひ一度小学校低学年~中学年でこの作品に挑戦しておきましょう。

なに。

名作は何度読み返したっていいのですから。


『ぼくんち』/西原理恵子
  • 絵本のようなタッチで描かれる「貧困」
  • どうしようもない人たちに囲まれてどう生きるか
  • すべてを包み込む、明るい空と広い海

大作過ぎる『カムイ伝』を読んだ後は、もう頭の中こんごらかった状態で重い気持ちを引きずっているかもしれません。

絵柄も後半に行けば行くほど壮絶ですしね。

そこで、いったん視線を足元に戻します。

つまりは、現代の「貧困」に目を配ってみましょう。

昔は定められた階級が大きく影響していたかもしれませんが、資本主義の現代では「金」こそが権力の面が大きいです。

もちろん、金は金、権力は権力ですが、現代はより密接に関連していると考えてよいでしょう。

そして、『カムイ伝』で見たような「百姓」に代わる現代の「奴隷階級」とは、政策的に誘導されて作られた貧困層です。

時代設定はおそらく70年代の田舎(というか作者の地元である高知?)の漁村と思われますが、これに近い空気は私の地元にも存在していました。

現代はまたここに回帰しつつある、と言えるでしょう。

明るく生きる家族の姿が描かれますが、「貧しさ」の手触りが伝わってくると思います。

「昔のひどい話」という紙芝居的なものでなく、身近に想像できてくる部分があると思います。


『銀河鉄道の夜』/ますむらひろし
  • 擬猫化された登場人物
  • 死出の旅路で問われる宮沢賢治的死生観
  • 「本当の幸(さいわ)い」とは?

さぁ、足元の現実に目を向けた後はもう一度、視線を遠くに飛ばしてみましょう。

この宮沢賢治・原作の『銀河鉄道の夜』の主人公・ジョバンニも経済的に苦しい生活を送る学生であり、学校にも居場所はありませんでした。

彼の乗り込む「銀河鉄道」は死出の列車であり、その道々で亡くなった人物たちの生き方や価値観に触れていく中で「本当の幸(さいわ)い」とはなんなのか、を見つけようとします。

宮沢賢治の「宮沢賢治的」としか言いようのない独特の世界観を、見事にコミカライズしてしまった稀有な作品です。

どっかで聞いたような言い方で恐縮ですが、「現実」に溺れるだけでは「真実」を見失ってしまうことは実際あります。

時に「現実」から飛び立って、心は銀河を旅しながら探す真実もある、ということです。

ただ目の前の出来事に対応し続けるのって、考えなくてすんで楽なんですよね。前に進んでいるつもりにもなれる。

例えば、先ほど紹介した西原理恵子『ぼくんち』の一太(長男)も、家族の幸せの象徴だった”家”を取り戻すために、命の危険もおかしていました。

家族は誰一人そんなことは望んでいないにも関わらず。

だから、時に立ち止まって遠くを見る。自分の本当に行きたい方角を確かめる。目の前の現実にばかりピントをあわせちゃダメなんです。

足元だけを見て歩いていると電信柱にぶつかったり、知らないところに進んでたりしますよね?

『銀河鉄道の夜』のような「死者との対話」の中から自分にとっての「本当の幸(さいわ)い」を突き詰めてみてみることも必要だと思います。


『銀河鉄道999』/松本零士
  • SFスペース・ジャーニー
  • 「永遠の命」の意味を問う
  • 現代版・『蜘蛛の糸』

銀河鉄道つながりで『銀河鉄道999』をご紹介します。

永遠に生きることが出来る「機械の身体」を求めて、謎の女性・メーテルと銀河を旅する少年・星野鉄郎の物語。

銀河の果てまでいくことができる銀河鉄道999(スリーナイン)のパスを手に入れたことで、「持たざる者」だった鉄郎の人生は一変します。

停留する星々でやたらとパスを狙われる日々。その過程でいろんな人々の夢や希望、平たく言うと「欲望」が描かれます。

私はこの作品が、現代版の『蜘蛛の糸』の寓話のようにも感じられるんですよ。

999(スリーナイン)という永遠の命へ続く希望の糸をたぐる鉄郎に、様々な事情を抱えた人たちが追いすがるように絡みついてくるように見えます。

ところで。

先ほどの『銀河鉄道の夜』で語られるのは、死者たちの「こうであれば良かった」という「静的な希望」でした。なぜ、静的か?

もはや死んでしまって、これからどうにもならないからです。

対して、『銀河鉄道999』では「動的な欲望」が描かれます。そりゃ動的ですよ。

今の今、夢と希望を叶えんと罪を犯してまで足掻いているわけですから。

この、死者の静的な問いかけの「賢治/ますむら・銀河鉄道」と生者の動的な生き様の「松本・銀河鉄道」を比較して読むことで、超然とした生きる意味と、血の滴るような生きる意味の両方に思いをはせることができるということです。

また、『銀河鉄道999』は単純にエンターテイメントとしても面白いですからね。

おすすめです。


『藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編』/藤子・F・不二雄
  • SF(すこし・ふしぎ)でちょっとブラック
  • 先見的なアイデアの数々
  • 完璧で無駄のない構成

藤子・F・ 不二雄先生に対して、『ドラえもん』や『オバQ』のイメージしかない方は少し驚くかもしれません。

いくつか紹介してみましょう。

  • 人間と家畜の立場を入れ替えた「ミノタウロスの皿」
  • 生きるために他人を食べることは許されるかを問う「カンビュセスの籤(くじ)」
  • 超高齢社会のその先の未来を描く「定年退食」
  • 過去の改変へのアンチテーゼとなる「あのバカは荒野を目指す」

などなど、1歩踏み込んだ作品群が特徴的です。

ここまで読んできた子どもたちなら、F先生が短いページ数に込めたテーマをくみ取る下地が出来つつあるのではないでしょうか?

F先生のマンガの構成力は抜群で、1コンセプト、1テーマがスッキリとまとまっており、格好の「思考のテキスト」となるでしょう。


『少年時代』/藤子不二夫Ⓐ
  • 戦時の疎開先での生活
  • 古き良き日本の四季
  • 強烈な権力闘争in小学校

F先生を紹介したとなれば、Ⓐ先生も紹介せねばなりません。

まず、小学生におすすめしたいのは『少年時代』。

東京の少年が戦時中に富山県に疎開し、そこでの生活を描いた作品で、原作は柏原兵三『長い道』となります。

疎開生活は”未知との遭遇”の連続でした。

その強烈なスクールカーストは、都会の比較的進歩的な価値観を持つ少年に大きな衝撃を与えます。

上下の関係、派閥、権力闘争。

規模が小さいだけで、本質的に大人の世界となんらかわらない”社会”が厳然と存在するのです。

私は、寮生活を思い出しました。

ぜひ、子どもたちには「友だち100人できるかな♪」なんてのんきなことを言わずに、「家族」以外ではじめて遭遇する社会的集団、「子ども社会」への心構えを持ってほしいと思います。

「なんのために生きるか?」など、哲学めいた少々スケールの大きいことも考えてきましたが、この『少年時代』は小学生にとっては、もっと身近で、もっと生々しいテーマを持っていると思います。

<この作品の記事>

『少年時代』実は過酷なバイオレンス空間「小学校」!子どもが年長時から読んで備えるべし

『少年時代』現代っ子必読!夏が過ぎ風あざむ、戦時日本の春夏秋冬を知る貴重なマンガ作品

『少年時代』これぞ近代日本の原点!?軍国精神あふれる昭和の少年社会

『少年時代』全体的に軍国主義の色濃い昭和初期あるある


『のんのんばあとオレ』/水木しげる
  • 水木しげる先生の自伝的作品
  • 昭和的でない独特の価値観
  • 少女との出会いと別れ

“戦時の少年時代”つながりで、水木しげる『のんのんばあとオレ』をご紹介します。

水木しげる少年の自伝的な内容で、妖怪の登場など多少のフィクションも混ざっています。

『少年時代』と同じ昭和期の生活風景の中で、当時としては(も?)かなり独特な価値観を持つ水木少年の目を通した世界が描かれます。

『少年時代』とセットで読むことで、いかに「水木しげる」少年やその父が当時としては特異な存在であるかもわかると思います。

また、二人の少女との出会いと別れが描かれますが、これがもう死に別れも辛ければ生き別れも辛い。

どこが地獄でどこが極楽か。

どちらの場合も水木少年は己の無力を噛みしめることになります。

だからこそ。

子どもらにはこの物語を疑似体験してもらいたい。

子どもの世界、子どもの社会の中に突然割言ってくる「病」や「人身売買」。

また、それに対して何の対応もできないという現実。

自分が無力であることを認識することこそが、大人になるためのスタート地点です。


『この世界の片隅に』『夕凪の街 桜の国』/こうの史代
  • 戦時の日常(夕凪の街/この世界の片隅に)
  • 結婚の後の恋愛(この世界の片隅に)
  • 「原爆が落ちる」ということ(夕凪の街/桜の国)

「自分が無力であることを認識することこそが、大人になるためのスタート地点」と書きましたが、では大人になれば無力感から解放されるのでしょうか?

すでに大人の皆さんは知ってますね。そういうわけにはいきません。

とりわけ空襲や原爆といった戦争がもたらす直接的な災禍について、人々は無力そのものだったでしょう。

例えば「夕凪の街」では、原爆が落ちて10年後の広島を生きる女性を通して、「原爆が投下された」ということの意味を丁寧に描き上げています。

「桜の国」では、原爆投下後、何十年とたった後に生きる現代の人々を描くことで、「原爆が投下された」ことの意味をさらに深めています。

『この世界の片隅に』ではよりじっくりとページを割いて、広島は呉に暮らす一人の女性の視点で、「戦時という日常」そして「日常が奪われること」を描き出しました。

このことは、子どもたちが折に触れ、学び、考え、想像していくことが大事だと思います。

「戦争は悲惨だということを学びましょう。」というステレオタイプな説教をしたくてこんなことを言っているわけではありません。

  • 「何が起こったのか」
  • 「なぜ起こったのか」
  • 「それはどういうことなのか」

ということの整理と理解に努めることは、なんにせよ、これからを生きるにあたって具体的に必要な所作だと思うのです。

戦争が、自分と無関係と言える人間は一人もいないのですから。

それを思えば、「大人たちも無力だった」と単純に考えることではないことに気づくはず。

「未来は僕らの手の中」です。


『はだしのゲン』/中沢啓治
  • 「原爆」を世界に知らしめ続けた
  • 教育委員会が小中学生に貸出禁止措置
  • 麦は踏まれて強くなる

さぁ、原爆の話が出たのであれば、この作品を出さないわけにはいきません。

【大人になるまでに読みたいマンガ100選シリーズ】小学校・低学年編/20選の最後を飾るのは、「小学生の3大トラウマ本」として名高い、『はだしのゲン』!

実際に被爆体験をした著者が描く、非常にショッキングな内容も含む物語です。

しかし、あらゆる艱難辛苦を物語の主人公たちの側で見守り続けた子供たちなら、きっとこの作品も受け入れることができるはず。

教育委員会により貸出禁止措置を受けたことでも有名ですが、その引力の強い表現は唯一無二のものであり、読者の心に大きな爪痕を残すでしょう。

「ぐぎぎ」と血を吐く描写や、ベロベロに剥げた生皮、体に突き刺さる無数のガラス片。

平時を生きる我々には「想像が及ばない」としか言いようのないなにもかもが異常な世界を描き出しました。

人を刺すナイフのような危険な作品ともいえ、この作品を子どもに読ませることに躊躇する親御さんや教育者がいることは理解できます。

プリキュア観た後にゲンは読めねぇ。

しかし、同時に声を大にして言いたいのはこの本は、マンガ作品として単純に優れているということです。

ドラマ性、キャラクター性、テーマ性、ユーモア…。

「右」とか「左」とか本来そういうくくりの中で良いとか悪いとか語られるべきでなく、もっと本質的なところでさらに再評価が必要な作品だと思っています。

(これはマンガ評論家の呉智英先生もおっしゃってました。その通りです。)

私が子育てを始めた時、伯父に「この世界を生き抜くために、この子に何を身に着けさせたらいいのだろう?」と尋ねました。

英語でしょうか? プログラミングでしょうか? やっぱり学歴?

伯父は躊躇なく「折れない心」と答えました。

「麦は踏まれるたびに強くなる」。『はだしのゲン』のメインテーマです。

小学校・低学年編/20選まとめ

「小学校・低学年向けにしては、ちょっとハードな作品が多いのではないか?」

そう感じていらっしゃる方もいるかもしれません。むべなるかな。

しかし、私は小学校の低学年~中学年にはあえて「少しハードな作品」「古い作品」という二つの観点ですすめています。

「エンタメ作品」よりも「ハードな作品」

エンタメは甘いお菓子です。

面白いです。文句ないです。素晴らしいです。

一度その味を味わうとそれ以外は食べたくなくなるほどに…。

幼い時期だからこそ、疑問の種を心に抱えること、理解できないことや、不条理なことを心に抱えるべきなのです。

そのわだかまりを少しずつ溶解させながら、心を成長させていきましょう。

先に暴力的に面白い作品ばかりを摂取してしまうと、租借しにくい・消化しにくい作品は「わかりづらい」と敬遠してしまう傾向があります。

エンタメは口当たりがいいので後からでも楽しめます。

「ハードな作品」こそはじめに読むべきなのです。

「新しい作品」よりも「古い作品」

ひとつは上記の理由と同じような理由です。

どうしても「古い作品」は絵柄や演出が古く、現代のマンガに慣れてしまってから読もうとすると読みづらく感じる子もいるでしょう。

私は小学生時代に投げかけられた「ジョジョは絵が汚いから読んでねえ」というセリフを生涯忘れません。

時代は『ドラゴンボール』や『幽遊白書』などアニメ調の表現が好まれ、劇画や重い絵柄は敬遠されてきた時代だったんだろうと思います。

だ・か・ら、はじめに古い作品から読むのです。

古い作品だって、当時の子供たちは夢中で読んだのですから、現代の子供たちも最初に読めば難なく親しめるはず。

また、初めにいわゆる「名作」と呼ばれる古くから残り続けているマンガを読むことで、「元ネタ」の存在を意識することができ、体系的にとらえることができるようになるでしょう。

終わりに

私はすでに人生の半分は通過したと思います。
「もう半分」かもしれませんし、「まだ半分」かもしれません。
ですが、子どもも生まれたこともあってか、自然と「下の世代に何を遺すか」ということを意識することが増えました。
そのひとつとして、貴重な日本独自の文化であるマンガをすすめるのです。
どうか。
新しい世界を生きる子供たちには、心地よいもの、口当たりの良いものだけに触れてほしくない。
一瞬で消費できる作品にばかり触れてほしくない。

自分の心に残り、その後も折々ゆっくりと消化していけるような、そんな体験をしてほしい。

そんな思いで選書しました。

次の「小学校・高学年編」ではもう少し幅をもたせエンタメ作品も紹介していきたいと思っていますが、本日のところはここまで。

ここまで15000字……‼

長々とお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

皆さんの好きなマンガが入っていなくて不快に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ひとまずご容赦を。

(良い作品があったらお気軽にSNS経由やお問合せフォームから教えてください)