『砂の栄冠』高校野球観戦の手引に最適!甲子園見る前にこれを読め!!

高校野球の手引書

著者:吉原さん(@yoshihara_san

『砂の栄冠』。良いんだ、この作品。

作品の質の高さの割にあんまり話題にならなかったんですが、相当な作品ですよ。

いや、例えば大谷翔平選手がモデルの選手がライバルとして立ちはだかったり、当の大谷選手も読んでいたりと、話題にはなったと思っています。

が、それでももっともっと評価されるべき作品だった。

個人的には近年の野球マンガの中でダントツのNO.1

『高校野球』という器そのものにスポットを当てた作品で、高校野球にあんまり詳しくない私みたいな人間には最高の手引書になりました。

何より、清濁合わせ呑んだ上での『野球』に対する愛情を強く感じる作品。

紹介しないわけにはいかないですね。

それでは、よろしくお願いします!

“高校野球”を知らない人にこそおすすめ!

ちなみに。

私は草野球はやりますけど、部活動での野球経験もありませんし、甲子園もそんなに見ません。

そんな私が野球の面白さに目覚めたのは大学生になってから。

運動目的で友達とキャッチボールしていたら、あれよあれよと草野球の世界へ入っていきました。

そんな、ある日。

夏休みに地元に帰省して、甲子園大会見ながら叔父に話したんですよ。

「俺も野球やればよかったなぁ」って。

そうすると叔父、「野球部はなぁ……結構問題があるぞ…」と言うわけです。

ここでは細かく説明しませんが、高校野球が持つ黒い側面に「あ、野球は好きだけど、野球部は無理だな」って思ったのを覚えています。

高校野球の裏側とその先へ

ちょっと前置きが長くなってしまいましたが…。

この作品は、そんなキレイごとばかりではない、エグミのある高校野球に真っ向から立ち向かうお話です。

はじめて叔父に高校野球の話を聞いたときは、興行としての野球、旧陸軍体質の野球の側面に興味が持てませんでした。

が、それを理解し、受け入れ、突き進む姿は非常にエキサイティング。私好みのストロングな作風です。

「無駄に」青春や仲間でベタついてない。キラキラしてない。

でも、力強く、本気で取り組んでいる。

そこにドラマがある。

よし・・・・

チームの気持ち つかんだぞ! これでみんな俺についてきてくれる!

『砂の栄冠』チームの気持ちは掴んだ!
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』2巻 第17話「キャプテン」)


俺一人の個の力で勝ち抜いてやる!

仲間なんていらない 誰も信用しない!

絆なんて糞喰らえだ!

『砂の栄冠』絆なんて糞喰らえ
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』18巻 第170話「経験」)

勘違いしてほしくないのは、「”キラキラまぶしい青春の高校野球”をディスる作品」ということではないんです。

ほら。

たまにいるじゃないですか。

世の中には表と裏しかないと思ってるんじゃないかと思しき人。

ちょっと裏側みただけで、すぐ「本質」とか言っちゃう人。

そういうことじゃないんですよ!!

この作品は「ほら、高校野球って皮一枚剥げばこんなに醜いんだよ~」ってことをさも得意気に語るような底の浅い作品ではありません。

根底は愛ですよ。野球愛。

そして、野球だけでなく様々な部分で応用がきく哲学に満ちています。

野球が特に好きでない人にも十分おすすめできる内容の濃さですよ。

高校野球は金がかかる!

それでは。高校野球の現実面に話を持っていきましょう。

このマンガのはじめのつかみはひょんなことから現金1,000万円を手に入れた主人公が、その金をうまくやりくりしながら甲子園を目指すという設定。

普通の感覚で言えば、「1,000万円!」となると思います。

素人目にはインパクトのある数字ですよね。「マンガなものだから大風呂敷広げたな」と。

しかし!

早くも第1巻の巻末企画「甲子園研究所」(「所長」と「助手」による架空の対談風コンテンツ)において、これがあっさり覆されます。

「1,000万じゃ甲子園は買えません!!」と断言。

マシン代、ボール代をはじめとした器具や消耗品だけで数百万円。

事実はフィクションより厳しいです。

一番高いのは遠征費だそうで、弱いチームだと自分たちが遠出するしかないからすっごい経費かかるそうですね。

例えば、とある東北地方の公立校は遠征費だけで、「1人」年間150万円だとか。

…うぉぉ。親御さん、すごい。

高校野球は監督のもの!

高校野球のチームカラーってかなり違うみたいですね。

よく考えたら、「高校3年間」って言うけど実際に指導するのは2年とちょっと。

選手たちはあっと言う間にいなくなってしまいます。

清宮選手なんて、ついこの間「1年生の怪物がいる」って話を聞いたような気がしていましたが、2017年の今年が最後の夏でしたもんね。

ほんとに早い。

しかし、監督は長いと何十年もそこにいて指導を続けていくわけですから、チームの個性の核はやはり監督です。

2校ほどご紹介しましょう。

智善和歌山→智弁和歌山

明らかに智弁和歌山ですよね(笑)。私でもわかる。

どのくらい現実と一致しているのか私は知りませんが、ウィキペディア(高嶋仁監督)を読む限りは近いように聞こえます。

智善・・・・守備は雑やし細かい作戦は無しで試合運びは荒っぽいやろ

はい

監督の指示もたったひとつ 狙って・・・・ 打て

けど・・・・ これでよう打ちよる フルスイングでボカスカ打つ!

打てなきゃコロッと負ける これがオモロイ!

見てて客は スカッとするねん

『砂の栄冠』智善和歌山→智弁和歌山
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』2巻 第13話「甲子園ノート」)

帝城→帝京

お次は明らかに帝京高校。サッカーでも有名ですね。

ウィキペディアではこのように→前田三夫監督。

とんなるずの石橋貴明さんや元・日ハムなどで活躍した森本稀哲・元選手もこの監督の教え子とのこと。

帝城は監督の動きをみているだけで楽しいんだ

監督が試合中に興奮して ベンチからでて人工芝ギリギリのところで指示出したり

突然 思いがけない選手起用したり 信じられない打撃戦を演じたり

大会に出るたびに話題を提供してくれる

『砂の栄冠』帝城→帝京
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』2巻 第13話「甲子園ノート」)

こんな感じで、チームの傾向を解説してくれるので、現実の高校野球部にも興味がでてきます。

他にも、大阪桐蔭や横浜高校、浦和学院、駒大苫小牧などをモデルにしていると思しきチームがチラホラと。

マンガ本体とは離れますが、こういった高校のチームや監督のことを調べはじめると、これがもう面白い!

ウィキペディアで読むだけでもかなり読み応えがある。

プロ野球は結構好きで本も読んでたんですが、高校野球はノーマークだったのがもったいなかった!

人に歴史あり。監督に歴史あり。チームに歴史あり。

高校野球が好きな人にとっては「今さら」感満載なのでしょうが、こういう面白みを伝えてくれたこの作品に感謝ですね。

ほんと、知らない人にこそおすすめ。

高校野球は興行!

言ってしまえば、当ったり前のそのとおり。

高校野球は興行です。

甲子園の高校野球・・・・ これはひとつの 興行なんや

『砂の栄冠』高校野球は興行なんや
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』2巻 第12話「甲子園は宇宙空間」


このスターとドラマを作り出すことによって その年の甲子園大会に国民的関心を集めたい

そういう真理が主催者にはある

『砂の栄冠』高校野球の主催者心理
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』2巻 第12話「甲子園は宇宙空間」

高校野球が興行であることを踏まえて、大会関係者の思惑に乗っ取り、「勝たせたい」と思わせるチームづくりをすることが勝利への近道。

勝つためには野球の実力を高めることばかりを考えていては不十分だということです。

「勝たせたいチーム」の代表例-明訓高校

例えば『ドカベン』の明訓高校なんかは、圧倒的個性と実力によって、これを地でやってた感じでしょうか。

超個性的な悪球打ちの名物キャプテン、岩鬼。

イケメンのアンダースロー、「小さな巨人」里中。

天才ピアニストにして守備の名手、殿馬。

飛び抜けた実力そのものが圧倒的個性「ドカベン」山田。

明訓高校の活躍は、「誰もが見たいと思わせるもの」で、球場全体が味方していました。

そう、作品世界の球場どころか、現実世界の読者である子どもたちまでも。

球場の観客も読者も、もっと彼らの「野球」が見たくなるんですよ。

大体、1番打者が巨漢のサードで、三振かホームランってだけで十分目立ちます。そして、そのホームランの音も「グワァラゴワガキーン」ですからね…。

それだけでも「なんだこのチームは…」となりますよ。

また。

あまりにも勝ちすぎるので、しまいには「負けさせてはいけない」かのような空気が漂っていた、とリアルタイムの読者である年上の従兄弟に聞きました。

これが、相手チームにとって、どれほどのプレッシャーとなるか…。

スタンドの力を借りることの理想のひとつは「明訓高校」だとハッキリと言えますね。

例えば『プレイボール』の墨谷高校もじっくり迫れば十分個性的なんですが、球場に出てきた瞬間に伝わるエンタメチックな個性とは違います。ま、有り体に言えば「地味」ですよ。

好きだけど。

好きだけど、「地味」です。

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では。

この物語、樫野高校はどのようなプランで観客を味方につけるつもりでしょうか?

それはつまり 樫野がどういうチームであれば観客が応援してくれるか スタンドの力が借りられるかどうかということ。

そこにチーム作りの具体的プランがある

『砂の栄冠』応援されるチームづくりとは
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』2巻 第12話「甲子園は宇宙空間」

その具体的内容は本編を読んで確認してもらうとして、こういうところからチームづくりをスタートさせているチームと当たることを考えるとゾッとしますよね。

もう取り組みのはじめの段階から違う。

ビジネスの世界とかでもそういうことってあるなぁ。

たまにトップランナーの話を聞くと、もう前提が違ってたりすることってありませんか?

「正直、そのスケールで取り組んでるところには敵わないわ・・・」みたいなビックリ感。

こうして、樫野高校は「高校野球は興行である」という前提に立ったチームづくりを進めていくことになります。

そんな野球マンガ聞いたことない。

素晴らしい。

勝利にこだわる、ってこういうこと。

すごいストレート。すごい変化球。すごいコントロール。すごいパワー。すごい守備。

その延長線上に勝利がある・・・・と、勘違いしちゃいけないってことです。

例えば、ピッチャーの仕事は160km投げることでも魔球を投げることでもなく、アウトをとること。

目標設定を間違えたまま、ただ「頑張る」だけじゃダメ。

高校野球は興行!パート2

高校野球が興行である、ということについては、こちらのシーンもさらっと紹介しておきたいと思います。

主人公である七嶋が大活躍した後の場面ですね。

記者が取材に来ています。

そうだ・・・・

まさにこれが 興行の現場 今 ここで俺の記事が生産されている

そして 明日には世の中に流通していく

つまり 俺は・・・・ 今年のセンバツ大会で

“七嶋裕之”という商品になった!

『砂の栄冠』七嶋裕之という商品

そうなったからには 消費者に愛されなくてはいけない

商品価値を最高に上げて 保ち続けなくてはいけない

『砂の栄冠』自分という商品価値を保つ
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』9巻 第84話「1千万円以前のヒロ」)

高校野球マンガにおいて、自分を商品としてとらえる主人公は、史上初のはず。

クレバーですねぇ。

もちろん、すべては勝利のため。

観客を味方につけるため。

観客を敵に回さないため。

審判の肩入れを期待するため、の仕込みです!

徹底しているんですよ。

「本気になる」ってこういうこと。ただ、「一生懸命頑張る」だけじゃダメ。

自分の中のあらゆる“妖刀”を抜く覚悟が必要です。

球場を味方につけると、なにか良いことあるの?

ところで。

「球場を味方につけることが本当に勝ち負けに影響してくるのか?」「試合するのは選手だろう?」という疑問を抱いた方はいらっしゃいませんか?

でも、これね。実際、あると思う。

比較するのもなんですが、私も人生初の打席に立った時、結構緊張しました。

だってピッチャーをはじめ、相手チームの全員がこっち見てる。

加えて、その球場にいるほぼ全員が自分の打席に注目してきますからね。

あれは初めての体験だったなぁ。

そして、野次られれば気になるし、黄色い声で応援されれば発奮する。

草野球ですら、そういうものですよ。

まして、高校野球といえば国民的行事であり、テレビだって入る。

舞い上がらない方がおかしい。

『ドカベン』で有名な水島新司先生の集大成、『大甲子園』でも初出場のりんご園農業高校の小兵のエース・中村が甲子園の重圧に「ウプッ」となるシーンがありました。

球場を敵に回すか味方につけるかっていうのは、高校生のメンタルに大きく影響を及ぼすことは想像に難くありません。

並大抵じゃないはずですよ。

野球に限らず、スポーツはメンタルの状態がパフォーマンスに大きく影響しますから。

え? 主人公のくせにしょっぱい!?

高校野球を題材にしたマンガ作品のエースで4番たるものが、球場の応援で勝とうなんて了見が狭いですって!?

大丈夫。

我らがヒーロー、七嶋は最後は力でねじ伏せる腹積もりですよ。

冗談じゃない!

喰われてたまるか!

スタンドの後押しがないなら 自分でやるしかない!

『砂の栄冠』自分でやるしかない

誰の力も借りない! 俺がやる!

俺が三振を取って 終わらせる!

『砂の栄冠』俺が三振を取る
(講談社/三田紀房『砂の栄冠』10巻 第96話「ブラックホール」)

最終最後、誰にも頼らない決意の上での「仕込み」であり、決して他力本願で野球やってるわけではありません。

やっぱりヒーローはそうでなくては。

続きます!

ここで終わっても良いんですが、この作品の中の超重要キャラクター、ガーソ(監督)のことをほとんど紹介できていませんので。

それでは、また!

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→なぜか楽天の紙書籍版の全巻セットだけ再入荷待ちでした…。でもこのリンクからも全巻にそれぞれアクセスできるので、一応リンク貼っておきます。

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