著者:吉原三等兵(@Twitter)
第1回の『漫画ルポ 中年童貞』の記事では、中年童貞の概要を。
『漫画ルポ 中年童貞』①壮絶すぎてギャグ!なのに笑えない日本の未来
第2回の記事では、収入があって問題意識もないAKBアイドルオタク、増井を。
『漫画ルポ 中年童貞』②人畜無害なAKBトップオタ・増井(33)の場合
第3回の記事では、収入がなくて問題意識もない、この問題の本丸。職場クラッシャーの坂口を。
『漫画ルポ 中年童貞』③社会が生んだ職場クラッシャー!ヘルパー2級・坂口(44)の場合
第4回の記事では、収入があって問題意識もあり、ついには童貞卒業した松野を。
『漫画ルポ 中年童貞』④女に絶望して男で童貞喪失!上場企業SE・松野(36)の場合
そして、今回の第5回の記事では、収入はないが問題意識もあり、「勝ち組」であると自認する、ネット右翼・宮田をご紹介して長きにわたった『漫画ルポ 中年童貞』の一連の記事にケリをつけたいと思います。
童貞分布図の赤色部分です。
では、本編です。よろしくお願いします!
目次
問題意識があり収入の少ない中年童貞・宮田(44)
ちょっと特殊な例と言っていいと思います。ネット右翼・宮田は。
iPhoneの転売で年に150万円ほどの収入を得て、最低限の収入を確保するために働くのは月5日程度だそうです。
残りの25日は1日中本を読んでいるかネットに向かって反中・反韓のつぶやきをしているのだとか。
本人いわく、「読書が最優先って生活したら結果的にそうなった」とのこと。
うーん。リアル隠者。正直ちょっとうらやましく感じました。できないけど。
ネットもあったため、承認欲求は満たされ寂しくなることはなかったそうです。
(宮田)
コミュニケーション障害で 引きこもりだったので 左翼思想の奴と喧嘩するのがガス抜きになっていた
(中村淳彦×桜壱バーゲン『漫画ルポ 中年童貞』第三章 ネット右翼と中年童貞/リイド社)
融通が利かなくて正義感の強い宮田は子どもの頃から孤立し、同級生をバカと決めつけて図書館にこもって本ばかり読んでいたそうです。
(・・・この部分はとても他人に思えない。)
「孤立すると自分は間違ってないって自己正当化から始まる被害妄想とか誇大妄想が生まれるわけです」とは宮田本人の談ですが、先ほどの松野にも通じます。
『漫画ルポ 中年童貞』④女に絶望して男で童貞喪失!上場企業SE・松野(36)の場合
孤立・排除された人間はまず自分に対して「自分は間違っていない」という理屈をつけねば生きていくことすら困難なのです。
こういうの、一時的に体験した方も多いんじゃないですか?
特に小~中学くらいは自分も相手も未熟だし、ちょっとしたことで孤立しがちですよね。
大なり小なり、学生時代に皆ちょっとずつやり方を覚えていくものだと思います。
しかし。
宮田の場合は就職してからも正義感が炸裂。曲がったことが許せない宮田は警察や税務署にタレこみ、結果的に会社ひとつ潰して多くの人の人生を変えました。
これにより自身もほとんど無職として生きていくことになります。
かくして、宮田はどっぷりネット右翼の世界に埋没していくことになりました。
ネット右翼と中年童貞
ここから、宮田によるネット右翼と中年童貞の相関性についての言及をご紹介しますが、これが面白い!
こう、薄っすらそうなんじゃないかと思っていたことがハッキリ言語化された感じですね。
現役のネット右翼から言われるので説得力がたまりません。
(宮田)
ネトウヨには中年童貞がメチャクチャ多いですよ!!
(中村淳彦×桜壱バーゲン『漫画ルポ 中年童貞』第三章 ネット右翼と中年童貞/リイド社)
宮田のセリフは断定的でしたが、私の心にはストンと落ちました。
↓(他、参考ブログ)
参考 ネトウヨは童貞だらけと発覚 ”社会から孤立しながらマジョリティーを叫ぶ「落第人間」達” 「孤独」が怖い草食動物、ネット右翼の実像軍荼利宮田は「元々ネットと中年童貞みたいな奴は親和性が高い」と続けます。「中年童貞みたいな奴」とはすなわちコミュ障で引きこもってる人間のことです。
取柄のない人間でも多数意見と同じことを言っていれば女のコからリアクションがもらえたりして気分が良いそうです。
そうかもしれませんね。
(宮田)
今のネトウヨと中年童貞は完全に繋がってる
「こんな正義感があって立派な僕が社会にも女にも受け入れられないのはおかしい!! そんな社会は変えよう!!」くらいに思ってますよ
ネットにはコミュニケーション能力が低くて不満を抱えてる人が多いからね
(中村淳彦×桜壱バーゲン『漫画ルポ 中年童貞』第三章 ネット右翼と中年童貞/リイド社)
この説明を聞いてやっと「ネトウヨ」の属性が理解できた気がするのです。
私は「過剰な言動」の原因は基本的にすべて「承認欲求」だと思っていますが、ここでもやはりそういうことだったということです。
勉強になるなあ!!
なぜ宮田がこれほどまでに自分を客観視することが出来るようになったかというと、"読書会"が理由だそうです。
毎月読書会で100人くらいの女性たちと接し続けたことがリハビリとなり、今は働かないで女の子と遊べる毎日が楽しくてしかたがないのだとか。
楽しく過ごしている人にはどんどん人が寄ってくるもの。
はたして、今現在でも「中年童貞」のままなのかはわかんないですね。
ネトウヨの女性も多いだろうし、もうとっくに脱童貞してるんじゃない?
宮田(44)のまとめ
「自分に必要なものがわかる」+「自分に必要なものだけで満たされる」という部分はやっぱりちょっと凄いな、と思います。
いろんなこと考えるとマネはできないんですけどね。
年収150万円で「勝ち組だ」と言う宮田の人生の勝ち負けの基準は尊敬に値します。
勝ち負けは自分で決めることなので、異論の余地はありません。
私も死ぬ瞬間は「なんて素晴らしい人生だったんだ」と思って死にたいものです。
『漫画ルポ 中年童貞』⑤現代の(亀)仙人か!?年収150万円の人生勝ち組ネット右翼・宮田(44)の場合・まとめ
タイプを分けて順を追って見てきましたが、ひとくくりに「中年童貞」と言ってもいろんなケースがあります。
繰り返しになりますが、「中年」で「童貞」である物理的事実が問題視されているわけではなく、その内実が問われています。
そして、社会的に大量にそういう層が生み出されており、目に見える形・見えない形で問題を引き起こしているということです。
多かれ少なかれ影響を受ける可能性は誰でも持ち合わせています。
日本人一人ひとりがこの問題について考え、最低限どのような姿勢でこの問題をとらえるかの"態度"を決めておく必要があるのではないでしょうか。
中年童貞問題にどう取り組むか
人に問題提起しといて自分の意見を言わないのもなんなんでちょっとだけ書いておきます。
私の中年童貞問題に対する姿勢は「これ以上、このような人間たちを生まないこと」です。
(できることは少ないですけど…)
社会の流れの中では、このような人たちは生まれやすくなっています。
これまでの社会であれば「ふつうの人」として生きていけるはずだった人がそういう人間に変わり、そして固定化してしまうのです。
ハマってしまったら最後、抜け出すのは非常に困難でしょう。ですので、まずそっちに行かせないことが大事です。
例えば、中年童貞の予備軍が職場に入ってきたとして…。
イジメない。排除もしない。見捨てもしない。
大抵の人は根幹はふつうの人間なので、働きかけ次第で変われる部分も多いはずですし、任せられる仕事も作れます。
工夫は必要ですけどね。
最低限、その人が排除される空気を作らない。作らせない。
まずはそういったことに取り組みたいと思います。
正直、坂口レベルまでいってしまうとどうにもならないと思いますので、そういう素養がある人を踏みとどませることが大事です。
『漫画ルポ 中年童貞』③社会が生んだ職場クラッシャー!ヘルパー2級・坂口(44)の場合
善人に見られたくてきれいごとで言ってるんでなくて、結局はそういうことが自分たちを救うと思っています。
最後に
具体的な紹介はしませんでしたが、童貞AV男優・鈴鹿イチローもこの作品には登場します。
もう、紹介する肩書からしておかしい。
童貞でAV男優ってどういうことなんでしょうか。
素振りしかしたことのないプロ野球選手ってことですよ。
分布図で言えば、右上の欄外に配置している人物です。
この人は凄いですよ。
他と一緒くたにできない、計れない"なにか"を持っています。
色々と足りないものが多い人ではあったんでしょうが、こんな分布図におさめることのできないスケールを感じました。
その芸名からも目指すものがとてつもなく大きかったことは理解できると思います。
ちょっと有名な方のようですが、知らない方がいればぜひ読んでみて欲しいなと思います。
それでは、また!
< 1巻完結! >
楽天kobo:【電子書籍】中村淳彦×桜壱バーゲン『漫画ルポ 中年童貞』1巻完結
Kindle:【電子書籍】中村淳彦×桜壱バーゲン『漫画ルポ 中年童貞』1巻完結
楽天:【紙書籍】中村淳彦×桜壱バーゲン『漫画ルポ 中年童貞』1巻完結
Amazon:【紙書籍】中村淳彦×桜壱バーゲン『漫画ルポ 中年童貞』1巻完結
『漫画ルポ 中年童貞』の他記事
『漫画ルポ 中年童貞』①壮絶すぎてギャグ!なのに笑えない日本の未来
『漫画ルポ 中年童貞』②人畜無害なAKBトップオタ・増井(33)の場合
『漫画ルポ 中年童貞』③社会が生んだ職場クラッシャー!ヘルパー2級・坂口(44)の場合
『漫画ルポ 中年童貞』④女に絶望して男で童貞喪失!上場企業SE・松野(36)の場合
『漫画ルポ 中年童貞』⑤現代の(亀)仙人か!?年収150万円の人生勝ち組ネット右翼・宮田(44)の場合←今ここ
あわせて読みたい
原作です。
一度は介護業界に身を置いた元フリーライターの作者が、実体験を出発点に中年童貞の恐ろしさを警鐘を鳴らす一冊。
活字で読みたい方はこちらでどうぞ。
『初期のいましろたかし』いましろたかし
中年で童貞の「山下」というキャラクターが出てくるんですが、私はこの登場人物が大好きで。
(表紙に出ている人物です)
こじらせ方にもジャスティスがあるというか、まっすぐ。
それなりに普通に生きてる弟とのやり取りも、なんとも言えなくてね…。良いんです。
『最強伝説黒沢』福本伸行
最強の中年童貞といったら、やっぱり黒沢。
40代。諦観があるというか、堂に入っている感もあります。
「いつしか恋人たちは気にならなくなり、それよりも家族連れが目に痛くなった」という描写は秀逸でしたね。
『Bバージン』山田玲司
時はバブル期。生物オタクの大学生が、好きな子と添い遂げようと悪戦苦闘する話。
どこを切っても「山田玲司」。
あんまり色々言うと難しい。ただ、好きか嫌いか聞かれれば、うん。好きなんだ。